まもなくみんなははきものを下駄箱に入れて教室へはいって、ちょうど外へならんだときのように組ごとに一列に机にすわりました。さっきの子もすまし込んで嘉助のうしろにすわりました。ところがもう大さわぎです。
「わあ、おらの机さ石かけはいってるぞ。」
「わあ、おらの机代わってるぞ。」
「キッコ、キッコ、うな通信簿持って来たが。おら忘れで来たぢゃあ。」
「わあい、さの、木ペン借せ、木ペン借せったら。」
「わあがない。ひとの雑記帳とってって。」
そのとき先生がはいって来ましたのでみんなもさわぎながらとにかく立ちあがり、一郎がいちばんうしろで、
「礼。」と言いました。
(宮沢賢治 「風の又三郎」)
新しく指導に入ってる外国人留学生の専門学校の教室は、まさにこの「風の又三郎」の教室の様子に似ている。みんな元気にワイワイガヤガヤ。まったく世話が焼けるが、それでもどこかかわいく思えてしまう。憎めない悪ガキ集団。
「又三郎」
又三郎 読むにははやい 酷暑かな
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