ル・ボー・タン

未知の領域に勇ましく切り込んで、後に続く世代のために新たに道を築いた偉大な人はどの業界にもいますが、こと日本のフランス菓子業界において忘れてはいけないのが河田勝彦さんです。1967年に渡仏し修行を重ね、パリのヒルトンのシェフ・ドゥ・パティシエを務めるまでになり、帰国後はフランス伝統菓子を日本に浸透させる原動力となり、現在では東京の世田谷で経営されている「オーボンヴュータン」は名店としてその名を全国に轟かせています。その河田さんのもとで修行した、あるいは影響を受けた多くのパティシエたちのお店は、これも名店として名を馳せるものが多いですが、我が福岡にもその影響はしっかりきておりまして、那珂川の「チクシヤ」さんもそうですし、今回ご紹介するこのお店もそうです。店頭でケーキを一度見ればわかりますが、伝統を尊重し、かつ品のある見た目は食べなくても「これは間違いない」と思わせてくれます。そして同じものを味の中にまた感じて、「おいしい」という言葉が出る前にしばし沈黙してしまうほどです。本当に感動する時には言葉は出ませんよね。食べていくうちに、シェフの苦労、そしてその先にある師匠の苦労、さらにその先にフランスのシェフの苦労、さらにフランスのお菓子の歴史を遡って……とそこまで思いが駆け巡ります。味は伝統であることをしみじみ感じさせてくれる、そんなお店です。是非是非、皆さんも味わってみて下さい。

(えしぇ蔵)

福岡市早良区弥生2-3-2
092-231-9675

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です